《カウンセリング(ベーシック)》カウンセリングの基礎知識―はじめての「安心できる対話」のつくり方

カウンセリング〜ベーシック〜

  1. カウンセリングとは

カウンセリングは、悩みや不安を安全で信頼できる関係の中で語り、自己理解と自己成長を促す専門的な対話のプロセスです。カウンセラーは助言の押しつけを避け、クライエントが自分の中の答えに気づくのを支援します。目的は「問題の根本を見立て、よりよい選択を共に探すこと」。単なる雑談や説得ではありません。

  1. 基本原則(ロジャーズの三原則を中心に)
    • 受容(無条件の肯定的関心):評価や批判をせず、その人の存在をまるごと尊重する。
    • 共感:表面の言葉だけでなく、その言葉の裏にある感情を理解し、言語化して返す。
    • 自己一致:カウンセラー自身が誠実で飾らない態度を保ち、場の安全を守る。
    この三つが整うと、心は防衛を緩め、内的な変化が起こりやすくなります。
  2. 代表的スキル
    • 傾聴:遮らず、相づち・視線・沈黙を使って話しやすさを保つ。
    • 要約:散らばった情報を短くまとめ、合意を取りながら次へ進む。
    • 感情の反映:「不安なんですね」「悔しさが残っているのですね」など、感情に名前を与える。
    • 質問:開かれた質問(どう感じましたか?)と、閉じた質問(はい/いいえ)を使い分ける。
    • リフレーミング:同じ事実を別の枠組みで見直し、可能性を広げる。
    • 課題設定:面接間のセルフワーク(記録・行動実験・セルフケア等)を提案し、変化を加速。
  3. セッションの流れ(ベーシック)
    1. 初回面接:来談目的・背景・安全確認。守秘義務と進め方を説明。
    2. アセスメント:状況(人間関係・仕事・健康・生活リズム)と感情・思考・行動パターンを整理。
    3. 目標合意:「睡眠を整える」「上司に意見を伝える練習をする」など具体的で測れる目標に。
    4. 介入:認知行動的アプローチ、来談者中心、対人関係、ナラティブ等を適用。
    5. 振り返り・評価:変化の兆しを確認し、次回までの課題を設定。
    6. 終結・フォロー:自力で回せる状態を確認し、必要に応じて間隔を空けてフォロー。
  4. どんなテーマに向いている?
    • 対人関係(家族・職場・恋愛)、自己肯定感、ストレス・不安、怒りの扱い、喪失体験、ライフイベント(転職・結婚・離別)、生きがい探し、習慣改善(睡眠・食事・スマホ依存)。
    • 医療・福祉と連携が必要な場合(重度のうつ状態、自傷他害のリスク、依存症等)は医療機関につなぐのが適切。カウンセリング単独で抱え込まないのが基本です。
  5. オンラインカウンセリングの基礎

メリットはアクセス性と継続のしやすさ。一方で、通信の安定・プライバシー確保・緊急時の連絡先共有が必須。ヘッドセット+静かな個室が理想です。初回で連絡不能時の取り決め(緊急連絡先・対応範囲)を明確にしておきましょう。

  1. 倫理と安全――安心して話すために
    • 守秘義務:例外は生命の危険・犯罪関与が疑われる場合など、契約時に説明。
    • インフォームド・コンセント:料金・回数目安・キャンセル規定・記録の扱いを明示。
    • 境界(バウンダリー):面接外の過度な連絡や金品授受、二重関係を避ける。
    • 文化的配慮:価値観やジェンダー、宗教・文化背景の違いを尊重する。
  2. 相談先の選び方(チェックリスト)
    • 資格・所属:臨床心理士、公認心理師、学会所属や研修歴の明示。
    • 専門領域:不安・トラウマ・カップル・発達など、ニーズと合うか。
    • 料金・契約:継続可能な費用か、キャンセル規定は明確か。
    • 相性:初回の安心感と説明の分かりやすさ。合わなければ変更してOK。
    • 連携:必要時に医療・福祉・法律等へつなぐネットワークを持つか。
  3. 自分でできるプレ・カウンセリング

面接を活かすために、以下をメモして持参すると効果的です。
• 「困っていることは何か」「困りごとのピークはいつ、どこで、誰と」
• その時の感情(0〜10の強さ)・思考・行動
• よかった日/楽だった瞬間(例外例)
• 目標(3週間後にどうなっていたいか)

  1. よくある誤解
    • “弱い人が行く場所”ではない:心のメンテナンスは歯科検診や健康診断と同じく予防的。
    • アドバイスをもらう場ではない:自分で選べる力を取り戻す場。
    • 一回で劇的に変わる?:多くは小さな変化の積み重ね。頻度と継続が鍵です。

まとめ

カウンセリングの核は、安心できる関係の中で自分を理解し直すこと。スキルや技法はあくまでそのための手段です。悩みの渦中にいる時こそ、ゆっくり呼吸し、言葉にして外に出すことから始めましょう。小さな気づきが積み重なるほど、選択肢は確かに増えていきます。まずは「どんな状態になれたら良いか」を一行で書き出し、信頼できる専門家に相談してみてください。

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