《カウンセルング》カウンセリングの基礎知識

カウンセリング〜ベーシック〜

【コミュニケーションの基本】

コミュニケーションをとったり、話を聞いたりするのが上手な人、あまり上手ではな い人… それって、生まれつきのものだと思っていませんか?

実はコミュニケーションというのは、生まれつきのものではなく、「スキル」にす ぎません。スキルですから、意識すれば誰でも身につけることができます。

コミュニケーションの基本について学ぶことは、セラピストとして活動していく上で とても役に立ちますので、ここではまずコミュニケーションスキルの基本について学ん でいきましょう。

コミュニケーションは、よくキャッチボールに例えられます。

あなたが、相手が受け取りやすいように…とボールを投げたとしましょう。当然あな たは、相手も自分が受け取りやすいボールを投げ返してくれるはず、と思うかもしれま せん。

もちろんその場合もありますが、どんなボールを返すかは相手が決めることだという ことを、よく理解しておかねばなりません。

いくらあなたが上手にボールを投げても、受け取るのが苦手な人だっていますし、投 げ返すのが苦手な人だっているのです。

また、相手が、キャッチボールをしたくない気持ちの場合もあるかもしれません。

自分の思い通りのボールが返ってこなかった時、相手を責めても仕方ありません。コ ミュニケーションは勝ち負けではないのです。

大切なことは、あなたが目の前にいる人とどんな関係を築きたいか?ということです。 人は、「受容される」ことによって動きます。受容するとき、相手を好きになること とは違います。

好きにならなくても好きになれない人がいるとしたら、まず、その人を好きになれな い自分自身を受け入れること。あなたが相手を受け入れている度合いは、あなたが自分の ことを受け入れている度合いに完全に一致します。

※参考文献:『この気持ち伝えたい』 伊藤守:著 ディスカヴァー

【聴く技術】

コミュニケーションの能力を、話す能力だと思っている限り、相手との間に一体感をもつことは難しいでしょう。

特にカウンセリングにおいて大切なコミュニケーションの能力は、相手に話させる能力であり、それを聴く能力です。

相手の話を最後まで、口でも頭の中でも、批判したり、否定したりしないで聴いていく能力です。

聴いてくれる人の前では、誰でも少しずつ話し出すものです。

近頃のあなたは、話を途中でさえぎらずに、心からの共感をもって最後まで自分の話を「聴いて」もらったことはありますか?

そういえばないな…という方がほとんどではないでしょうか。

それほどどんな話を聞く時、本当に「聴いて」もらっていないのです。

セッションでは、クライアントの話を、心から「聴く」ことが求められます。

一番大切なのは、セラピストがいかに真摯にクライアントに向き合うことですが、

でもどうやってそれを表現したらいいのかわからない、という方もいるでしょう。

「聴く」というのは一つのスキルであり、練習さえすれば誰でも身につけることのできるスキルです。

ここでは、そういったいくつかのスキルをご紹介しましょう。

●心と身体全体で「聴く」

コミュニケーションで伝わるのは言葉だけではなく、「あなたのあり方」全部が伝わっていきます。

(言葉の内容が伝わる割合は7%、ついで声のトーン・大きさ・速さから伝わる割合が38%、表情・身振り・姿勢から伝わる割合が55%、という調査結果があります)

いくら口で「安心して話してください」と言っていても、腕組みをしながら言われたのでは安心して話せませんね。しかしこの非言語的な表現は、無意識のうちにやっていることがほとんどなのです。

ペーシングには様々なものがあります。声の大きさ、話すスピード、姿勢、視線の高さ、言葉づかい、服装…。

といった言葉の内容に気をつけても、相手の身体さが気になると思ったら、非言語的な表現に少し意識を向けてみてください。

また、自分自身のコミュニケーションが、言語以外の部分、つまり非言語の部分が多く伝わるのと同じように、クライアントは言語以外の部分でたくさんのことを伝えてきています。

相手が伝えたい内容だけではなく、そこに表現されている相手の気持ち・感情を受け取ることが大切なのです。

完了感をもたらすスキル〜

「仕事が辛くて仕方ないんです」と言われたら、あなたならどう返しますか?

「そんなことどうするの」「もう少し頑張ったら?」「あなたなら大丈夫よ!」…

これらの例は、相手のボールを受け取っているのではなく、自分が投げたボールを投げている例です。

これでは、「自分の気持ちを受け止めてもらえている」という気持ちにはなれません。

大切なのは、相手のボールをしっかり受け取って、相手に話させることです。

「仕事が辛くて仕方がないんですね。例えばどんなところが辛いんですか?」

このように、相手の気持ちを繰り返すことで、相手は自分の言ったことが否定されずに

受け止めてもらえた、と感じられるのです。

このように、完了感をもたらすスキルの例として「バックトラッキング」があります。

バックトラッキングとは、相手の話を伝え返すことです。

これには3つの方法があります。

・相手の直前の言葉をそのまま返す

・話す順番は、まとめて返す

・相手の話にキーワードを返す

「あなたは〇〇と感じたのですね」と、相手の気持ちを受け取ることで、「この人は

私をわかってくれた」と安心感を感じられます。

ただし、バックトラッキングは同意とは違います。私はあなたの話を聞いていますよ、

というサインです。

また、完了感をもたらす接続詞として、「促しの接続詞」が挙げられます。

英語で言えば「And」でつながっていく言葉、「それから?」「それで?」などの言葉です。

相手の話の途中で「え?そうなの?」と思ったり、「違うんじゃないの」と思うこともあるかもしれません。

それでもあなたは聴き続けることができますか?

ここでもしあなたが「いや、それは違うんじゃないですか」と言ってしまうと、相手のシャッターは下りてしまいます。

「そうか、とても悔しかったんですね。それからどうされたんですか?」と促し続けることができたら、あなたは上手な聴き手のスタンスに立っています。

●相づちを打つ

相手が話している時に、次に自分が何を話そうか考えていたり、自分自身のことを考えていると、相づちはなかなか打てません。耳は聞くモードになっていても、頭が話すモードになっているからです。耳も頭も聞くモードになっていないと、相づちはなかなか打てないのです。

話しやすい環境をつくるためには、聞き手が話を肯定的に受け取ることが大切です。自分の話を否定的に聞かれていることが分かると、話し手は話す気がしなくなってしまいます。

カウンセラーの姿勢として重要なものに、「受容」があります。相手の言ったことを肯定的に捉えるということは、相手の言ったことは相手のこととして認めるということです。

セラピストには、自他の区別が要求されます。

相手の話を聴く時には自分の意見は出さず、相手の気持ちを肯定しながら聴いているのです。そしてそれを確かめるものの一つに相づちがあります。

相手の話が聴けなくなってくると、相づちが打てなくなります。

●自分の話をしない

セラピストはクライアントに対して、自分自身の話をしません。

これは相手から聞かれても話さないという防衛的態度からではありません。

クライアントは、自分の話を聴きにきてもらっているのであり、セッションを受けにきているのであって、セラピストの話やアドバイスを聞きに来たのではないからです。

●自分自身の基準を知る

いつも安定していなければならない、怒ってはいけない、うじうじしてはいけない、

いつまでも悩んでいてはいけない…等。

人はそれぞれ、自分に対する「こうあるべき」「こうあってはならない」という思い込みを持っていることが多いものです。

カウンセラー自身が自分自身に対してこういった思い込みを無意識のうちに持っている場合、その思い込みと同じクライアントには何故かイライラしてしまう…など、苦手意識を感じることがあります。

自分の基準が自分自身に許していないことを、クライアントがしているのを見て、無意識のうちにイライラしてしまうのです。

あなたは自分自身に対して、どうでなければならないと思っているでしょうか。

自分自身に対して持っている基準にも、ときどき目を向けてみてください。ただこれは、「自分自身に対して基準を持っているのはいけないことだ」というのではありません。

自分はこんな基準を持っているのだと知り、認めるだけでいいのです。


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