《カウンセリング》日本におけるカウンセリングの歴史

カウンセリング〜ベーシック〜

●アメリカからの派遣講師団

学生厚生補導
 わが国においては、カウンセリングの考え方は戦後、大学における学生厚生補導(SPS)の推進とともに発展した。昭和26年から27年にかけて、ウェスレー・R・ロイドを団長とするアメリカからの派遣講師団が、東京大学、京都大学、九州大学などで、それぞれ3ヶ月にわたる研修を行った。これには多数の大学の教職員が参加している。昭和28年に東京大学で初めて学生相談室が開設され、カウンセリングは開始された。昭和30年代に入ると各地の大学に相談室が設けられるようになった。初期の頃に開設された大学として、東京大学、九州大学、中央大学、東北大学、横浜国立大学、立教大学、山口大学、鹿児島大学、愛媛大学、宮崎大学などが挙げられる。昭和33年に学生相談研究会が行った調査では、相談室を設けている大学は63校に達している。

ウィリアムソンの来日
 昭和31年には臨床的カウンセリングの提唱者でアメリカ心理学会の重鎮であるE.G.ウィリアムソンが来日し、東京大学で3ヶ月にわたってカウンセリングの理論と実際について集中講義を行った。昭和32年には沢田慶輔によって『相談心理学』が編集され、カウンセリング心理学の詳細が紹介された。この本は日本におけるカウンセリングの発展の足跡を記した上で、極めて重要な文献である。その後、昭和36年には、来談者中心療法の提唱者であるカール・ロジャーズと、進路指導等の理論家で職業的発達理論の提唱者であるドナルド・スーパーが来日し、それぞれの理論を紹介した。昭和42年には現在の日本カウンセリング学会(昭和62年改称)の前身である日本相談学会が設立された。

全国学生相談研修会
 日本におけるカウンセリングの発展に大きく貢献した組織として、日本学 生相談研究会(現日本学生相談学会)の主催で昭和37年から毎年開かれて いる全国学生相談研修会を挙げることができる。この研修会は昭和45年以 降、毎年、米国から著名なカウンセリング研究者を招聘し、新しい理論と技 法の紹介に努めてきている。行動論的カウンセリングのJ.D.クルンボルツ、 マイクロカウンセリングのA.E.アイビー、論理療法のA.エリス、人間性心 理学のR.R.カーカフなど多数の著名な研究者が来日している。

学会の動向
 昭和40年代までは、心理学に関係する学会としては日本心理学会や日本 教育心理学会、日本応用心理学会などの総合学会が中心であり、いわゆる専 門学会はまだあまり設立されていなかった。昭和50年代に入るとそれぞれ の領域ごとに多数の専門的な学会が設立され、専門領域の細分化が進むこ とになった(表1-2)。

表1-2 日本におけるカウンセリング関連学会等の発足

昭和36年 日本臨床心理学会
昭和42年 日本相談学会
昭和52年 日本行動療法学会
昭和57年 日本心理臨床学会
     日本人間性心理学会
昭和59年 日本家族研究・家族療法学会
昭和62年 日本学生相談学会
     日本カウンセリング学会(日本相談学会改称)
昭和63年 日本健康心理学会
平成元年 日本臨床心理士会

用文献…「カウンセリング技法入門」 玉瀬耕治/著  教

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