■ ペーシングとは何か
カウンセリングにおいて「ペーシング(pacing)」とは、
クライアントの呼吸・話すスピード・声のトーン・姿勢・感情のリズムなどに“歩調を合わせる”ことを意味します。
直訳すれば「ペースを合わせる」ですが、単なる技術ではなく、相手の世界に寄り添うための心構えでもあります。
カウンセラーが自分のテンポで話を進めてしまうと、
クライアントは「理解されていない」と感じ、心の扉を閉ざしてしまいます。
反対に、ペーシングによって呼吸やテンポを合わせることで、
相手は「この人は私の気持ちを感じ取ってくれている」と安心し、
自然に信頼関係(ラポール)が生まれます。
■ 言葉よりも“エネルギー”が伝わる
人と人とのコミュニケーションにおいて、
実は言葉で伝わる情報は全体の7%程度に過ぎないといわれます。
残りの93%は、声のトーン・表情・姿勢・間(ま)・エネルギーの質など、
非言語的な要素によって伝わっているのです。
カウンセリングでは、この“非言語の共鳴”がとても大切です。
たとえば、クライアントがゆっくりとした口調で話しているときに、
カウンセラーが早口で答えてしまうと、波長がズレてしまいます。
逆に、同じテンポでうなずき、同じ呼吸のリズムで傾聴すれば、
相手の無意識は「安心」「受容」「共感」を感じ取り、心が開きやすくなります。
これは言葉ではなく、“波動の共鳴”のようなもの。
まさにレイキのヒーリングとも通じる「エネルギーの同調」といえるでしょう。
■ ペーシングの3つのレベル
ペーシングは、単なる模倣ではなく、深いレベルでの“同調”を意味します。
以下の3つの段階を意識すると、より自然で深い関係が築けます。
① 表面的ペーシング(身体・動作)
まずは、クライアントの姿勢・動作・呼吸に合わせることから始めます。
相手が静かに座っていれば、自分も落ち着いた姿勢で。
相手がうなずけば、自分もうなずく。
呼吸が速ければ、最初はその速さに合わせ、少しずつゆっくりにして導く。
これだけでも、安心感が生まれます。
② 感情的ペーシング(感情・トーン)
次に、クライアントの感情の波に合わせます。
悲しみを感じている人に「元気出しましょう」は逆効果。
そのときは静かに、穏やかに寄り添いながら、
「とてもつらかったんですね」と共感の言葉で心を包みます。
逆に、喜びや感動を共有するときは、笑顔でエネルギーを合わせる。
感情のリズムを尊重することが大切です。
③ 内的ペーシング(思考・信念)
最も深いレベルでは、クライアントの価値観・信念・世界観に歩調を合わせます。
たとえば、スピリチュアルな表現を使う人には、その感性を尊重し、
理性的に整理したい人には、言語的・論理的なスタイルで対応する。
「相手の世界観の中で共に考える」ことが、真のペーシングです。
■ ペーシングがもたらす変化
ペーシングを丁寧に行うと、クライアントの心は穏やかに開いていきます。
最初は警戒していた人が、少しずつ安心し、やがて涙や笑顔が自然にあふれる。
それは、カウンセラーの存在そのものが“安心の場”になっている証拠です。
このときカウンセラーは、「何を言うか」よりも「どう在るか」が大切です。
ペーシングとは、相手のリズムに合わせる“在り方の技術”。
共に呼吸し、共に感じることで、
クライアントの中に眠っていた「自己治癒力」や「気づき」が自然に目覚めていきます。
■ ペーシングからリーディングへ
ペーシングがうまくできるようになると、
クライアントの心と深くつながり、自然に“リーディング(導く)”段階へと進めます。
たとえば、相手がネガティブな感情でいっぱいのとき、
最初は同じテンポで寄り添いながら、少しずつ穏やかな呼吸や言葉に変えていく。
すると相手も、無意識にその波長に同調し、落ち着きを取り戻していきます。
これは言葉を使わない「誘導」であり、
まさにレイキや瞑想の場で起こる“波動調整”と同じ原理です。
カウンセラーは、相手を変えようとするのではなく、
“自分の安定した波動で相手を包む”ことが大切なのです。
■ まとめ
ペーシングとは、クライアントの呼吸・感情・世界観に歩調を合わせること 技術ではなく、「共に在る」姿勢が信頼を育てる ペーシングができると、自然にラポール(信頼関係)が深まり、 クライアント自身の気づきと癒しが生まれる 最終的には、ペーシング → リーディング → 自立のプロセスへと導かれていく
🌿 カウンセリングは、言葉のやり取りではなく“波の調和”です。
ペーシングによって共に呼吸し、共に感じるとき、
クライアントは「ありのままの自分」を安心して表現できるようになります。

