カウンセリングを深く学んでいくと、表面的な言葉や行動の奥にある「心の構造」に触れることになります。
アドバンス(上級)レベルでは、クライアントの感情や思考の背景にある潜在意識の働きを理解することが求められます。
心の仕組みを知ることは、カウンセラー自身の内面を整えることにもつながり、より深い共感とサポートが可能になります。
意識と無意識 ― 氷山のような心の構造
私たちの心は、しばしば「氷山」に例えられます。
海面に出ている部分(意識)は、思考・判断・意図的な行動を司る部分です。
一方で、海の下に広がる大部分(無意識・潜在意識)が、感情・価値観・記憶・信念などを支えています。
実際の行動や反応の多くは、この「見えない無意識」によって左右されます。
たとえば、他人の言葉に過剰に反応してしまうとき、それは過去の体験や心の奥にある“思い込み”が影響していることが多いのです。
カウンセラーは、この無意識の働きを理解し、クライアントが自分自身の内側に気づけるよう促していきます。
感情は「心のメッセージ」
アドバンスの段階では、感情を「敵」として扱うのではなく、「心からの大切なメッセージ」として受け取ります。
怒り、悲しみ、不安――これらは抑えるべきものではなく、心が本当のニーズを伝えようとしているサインです。
たとえば、怒りの奥には「わかってほしい」という願いが、不安の奥には「安心したい」という気持ちがあります。
カウンセリングでは、この“感情の根っこ”に気づくことが重要です。
クライアントが自分の感情を否定せず、受け止められるようになると、自然と行動も変化していきます。
心の防衛機制 ― 自分を守る無意識の働き
心は傷つくことを避けるために、無意識のうちに「防衛機制」を働かせます。
たとえば、
失敗を他人のせいにしてしまう(投影) 辛い出来事を忘れようとする(抑圧) 理屈で納得させようとする(合理化)
これらは一見ネガティブに見えますが、心が自分を守るための自然な反応です。
アドバンスの学びでは、こうした防衛の仕組みを理解し、クライアントを「間違っている」と判断せず、その背後にある痛みや恐れに寄り添う姿勢を身につけていきます。
意識的に“選択”する心へ
心の仕組みを理解すると、私たちは無意識に反応する生き方から、意識的に選択する生き方へと変わります。
たとえば、過去の出来事によって「自分はダメだ」と思い込んでいた人が、その思考の癖に気づくだけで、現実の受け止め方が変わります。
カウンセリングの目的は、クライアントの心を変えることではなく、
その人が「自分の心の動きを理解し、自分で選べるようになる」こと。
心の仕組みを知ることで、人は初めて自由になります。
まとめ
カウンセリング《アドバンス》で学ぶ心の仕組みは、
単なる知識ではなく、“人を深く理解するための地図”です。
意識と無意識のバランス、感情の意味、防衛の働き。
これらを理解することで、クライアントの語る言葉の背後にある「本当の声」を聴き取れるようになります。
そして同時に、カウンセラー自身の心もまた整っていきます。
心の仕組みを理解することは、他者を癒す前にまず「自分自身を理解し、受け入れること」なのです。

