カウンセリングの基本に「傾聴」というスキルがあります。
これは単に“耳で話を聞く”という意味ではありません。
クライアントの言葉に心を向け、全身でその存在を受け取る――
それが「心と体で聴く」という、より深いレベルの傾聴です。
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■ 聴くとは、相手の世界に触れること
多くの人が、誰かの話を聞いているとき、心の中でつい「次に何を言おうか」と考えてしまいます。
しかしカウンセリングにおいての“聴く”とは、自分の内側の声を一度静め、相手の世界にそっと入っていくこと。
言葉の内容だけでなく、表情、声のトーン、間の取り方、体の動き――
すべてがその人の心の状態を伝えるサインです。
クライアントが語る「言葉」だけでなく、「沈黙」や「ため息」もまた、心の表現。
それを頭で分析するのではなく、心と体の感覚を通して“感じ取る”ことが大切です。
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■ 心で聴くとは、共感で寄り添うこと
心で聴くとは、「相手の気持ちを感じ取る」こと。
それは同情ではなく、相手の心の痛みや喜びを、自分の内側に響かせて理解する姿勢です。
クライアントが「つらかったんです」と言葉にしたとき、
その奥にある「誰にもわかってもらえなかった寂しさ」や「助けを求める思い」に気づくこと。
カウンセラーが心で聴くとき、クライアントは「理解された」と感じ、少しずつ心を開いていきます。
この「共感による理解」こそ、カウンセリングの中心に流れる“癒しのエネルギー”なのです。
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■ 体で聴くとは、感覚で受け取ること
もうひとつ大切なのが「体で聴く」こと。
これは、相手の話を聞きながら、自分の体に起こる反応に意識を向けるということです。
たとえば、クライアントの言葉を聞いて胸が締めつけられるように感じたり、
肩が重くなったり、涙が出そうになることがあります。
それは単なる偶然ではなく、クライアントの感情が共鳴して伝わっているサインです。
体で聴くことで、頭ではわからなかった「感情の真実」に気づけることがあります。
その気づきを大切にしながら、静かに相手を見守る――
その姿勢が、深い信頼関係を築くカギとなります。
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■ 聴くとは「開く」こと
心と体で聴くためには、まずカウンセラー自身が“開かれている”必要があります。
自分が緊張していたり、心が閉じていると、相手の声が届きにくくなります。
深呼吸をして、体をリラックスさせ、自分の心をニュートラルに保つ。
「今、この瞬間に一緒にいる」という意識で、相手の話を受け取る。
その状態こそ、最も純粋な“傾聴”の姿です。
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■ 相手を癒すのは、言葉ではなく「在り方」
カウンセリングの現場では、上手に言葉を返すことよりも、
「その人の全てを受け入れる在り方」が何よりも重要です。
心と体で聴くとは、技術ではなく、在り方そのものなのです。
相手の言葉に耳を傾けながら、自分の体と心を通して「いま、あなたを感じています」と伝える。
その静かな共鳴が、クライアントの心を少しずつ癒していきます。
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■ おわりに
カウンセリング(ベーシック)で学ぶ“心と体で聴く”という姿勢は、
クライアントだけでなく、私たち自身の人間関係にも深い気づきをもたらしてくれます。
誰かの話を聴くとき、ただ耳で聞くのではなく、心で感じ、体で受け取る。
その瞬間、相手との間に見えない温かな光が流れ始めます。
聴くとは、理解することではなく、共に存在すること。
その静かな共鳴こそが、癒しの原点なのです。

