カウンセリング(アドバンス)における本質
「カウンセリングは相談業務ではない」という視点が深い関わりを生む
カウンセリングを学び始めた人の多くが、一度は抱く疑問があります。
「カウンセラーは、相談に乗る仕事なのか?」
一見すると当然のように思えるこの問いですが、アドバンスレベルへ進むと、
この考え方自体が関わりを浅くし、クライアントの成長を妨げることに気づきます。
結論から言うと、
カウンセリングは“相談業務”ではありません。
相談ではなく、“内的な気づきを引き出す対話”です。
本記事では、なぜカウンセリングが相談業務ではないのか、
そしてアドバンスカウンセリングにおいて
この理解がどれほど重要な軸となるのかを詳しく解説します。
■ 「相談=答えを提示する」という誤解
一般的に「相談」と聞くと、多くの人は次のようなイメージを持ちます。
悩みの内容を聞く 状況を整理する 解決策やアドバイスを提案する 進むべき方向を示す
これは 相談業務(コンサルティング・助言業務) としては正しい働き方です。
しかしカウンセリングにおいて同じことをすると、
クライアントは**
「この人に言われたから、そうする」
「正解をもらうために来る」**
という依存的な関わりに入りやすくなります。
アドバンスレベルのカウンセリングでは、
この依存構造を避け、
クライアントが自分の内側に答えを見つけるための「媒介者」として関わります。
■ カウンセリングは「問題解決」ではなく「気づきの支援」
カウンセリングの目的は、
問題を解決することではなく、クライアントが自分自身の内側にある答えに気づくこと。
ここが相談業務との最大の違いです。
相談業務:外側から解決策を与える
カウンセリング:内側の気づきを支える
例えば、クライアントが
「仕事を辞めたいんです」と話したとします。
相談なら
「辞めるメリット・デメリットは?」「次の仕事は?」
といったアドバイス的な流れになります。
しかしカウンセリングでは、
その言葉の奥にある“感情”や“本音”に寄り添い、
クライアント自身が気づきを深めるよう支援します。
■ アドバンスカウンセリングで大切な「聴く姿勢」
アドバンスになると、傾聴は単なる「聞く」ではなく
“クライアントの内面が動くための空間づくり” になります。
相談的な関わりでは、カウンセラーは
「どう答えよう」「何を言えば正解だろう」
と頭で考えがちですが、
この思考はクライアントの語りを浅くします。
一方、カウンセリングでは次のような姿勢が求められます。
答えを出そうとしない クライアントのペースを尊重する 感情の流れを妨げない 沈黙を大切にする 話の“意味”より“背景”を聴く
この姿勢が、クライアントの内側にある「本当のテーマ」を浮かび上がらせます。
■ 「相談モード」がセッションを浅くする理由
相談モードに入ると、多くのカウンセラーは無意識に次の言葉を発しやすくなります。
「こうしてみたらどうですか?」 「それなら○○するべきかもしれませんね」 「つまり、こういうことですよね?」
一見すると親切で、会話の流れも良さそうですが、
これがクライアントの“気づき”を奪ってしまうのです。
クライアントは
「言われたことに従っているだけ」
になり、主体性が育ちません。
カウンセリングは、
クライアントが“自分で選ぶ力”を取り戻すプロセス。
相談モードはその真逆の関わりになってしまいます。
■ カウンセリングは「自己探索の場」
アドバンスで重視される“内的プロセス”
アドバンスレベルでは、クライアントの言葉の背後にある
次のような内的プロセスに注目します。
本当は言いたくて言えなかったこと 自分でも整理できていない感情 気づいているのに見ないようにしていた思い 行動ではなく「心」が求めているもの
相談業務では、この領域には触れません。
なぜなら相談は外側の状況整理が目的だからです。
しかしカウンセリングの目的は「心の動き」。
アドバンスでは
“言葉にならない声を聴く” という姿勢が中心になります。
■ アドバンスの鍵は「クライアントを信頼すること」
相談業務では、相談者を“助ける対象”として扱います。
しかしカウンセリングでは、
クライアントは自分の人生の専門家であり、
自分の中に答えを持っていると捉えます。
カウンセラーは答えを与える人ではなく、
答えに気づくプロセスを支える人。
この信頼があると、カウンセラーは焦らず、
沈黙やゆっくりしたペースを尊重できるようになります。
■ まとめ
カウンセリングは「相談」ではなく「内的気づきの場」
相談モードから抜けると、セッションは一気に深まる
アドバンスカウンセリングで重要なのは、
カウンセリング=相談ではない
という根本を理解することです。
カウンセラーは解決策を与えない 内側の気づきを支援する クライアントの主体性を育てる 心の深い部分に触れる 対話よりも“存在の質”が重要
この視点に立つと、
クライアントの語りは深くなり、
自らの力で人生を選び取る力が育っていきます。
アドバンスレベルのカウンセリングとは、
相談業務を超えて、
クライアントの本来の力を引き出す深い関わり なのです。

