カウンセリング(アドバンス)における前提
「クライアント本人に“問題を解決したい意欲”があること」の大切さ
カウンセリングを学び進めると、誰もが一度は向き合うテーマがあります。
それは、「クライアント本人に、解決への意欲があることは必須なのか?」 という問いです。
初級〜中級では「話を聴くこと」が中心であるため、
クライアントの意欲が多少弱くてもセッションは成立します。
しかし アドバンスレベル に進むと、
カウンセリングの質を左右する大きな要素として
“本人の意欲”があるかどうか が浮かび上がります。
それはなぜでしょうか。
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■ カウンセリングは「主体的な変化」を支援するプロセス
カウンセリングは、問題を代わりに解決してあげる場所ではありません。
カウンセラーはアドバイスや答えを提供するのではなく、
クライアント自身が「気づき」「選び」「動く」ための土台を整える存在です。
そのため、いくらカウンセラーが寄り添い、
どれだけ丁寧に場を作っても、
クライアント自身に『変わりたい』『解決したい』という意欲がなければ、内的な動きは起こりません。
つまり、カウンセリングとは
“主体性を持つ人をサポートするプロセス” であり、
行動の中心人物はあくまでもクライアント本人なのです。
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■ 意欲がないと起きる3つの停滞
① 話が堂々巡りになる
意欲が弱い場合、
気持ちや状況の整理はできても、
“前進につながる視点の変化”が起こりにくくなります。
② カウンセラーに依存しやすくなる
「何とかしてほしい」「答えが欲しい」という姿勢が強くなると、
カウンセリングは相談・助言の場へと変質し、
クライアントの成長が止まってしまいます。
③ 気づきが深まらない
意欲が低いと、心の深い部分に触れる準備が整わず、
本質的なテーマに到達しにくくなります。
アドバンスカウンセラーが意欲を確認する理由は、
この“停滞”を防ぎ、
クライアントの力を最大限に引き出すためなのです。
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■ 「意欲がある」とは強い意思のことではない
ここで誤解してほしくないのは、
“強い意志”や“確固たる決意”が必要なのではない ということ。
アドバンスで求められる意欲とは、
次のような“静かで柔らかい前向きさ”のことです。
• 変わりたい気持ちが少しでもある
• 今の状態を見つめる覚悟がある
• 心の動きを受け止めようとする姿勢がある
• 自分の人生を自分で選びたい想いがある
たとえ怖さや不安があっても、
“ほんの少しの前向きさ” があれば十分なのです。
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■ 意欲を引き出すのもカウンセラーの役割
意欲が弱いクライアントに対して、
「意欲がないからカウンセリングできない」と線を引くのではなく、
アドバンスでは “意欲が育つ土壌をつくる” ことも重要になります。
次のような関わりは、意欲の芽を育てる力があります。
• クライアントの語りを評価せず受け止める
• 変化を急がせず、その人のペースを尊重する
• 小さな気づきを大切に扱う
• クライアントの強さ・選択してきた背景に光を当てる
安心できる場が育つと、
それまで気づかなかった
「変わりたいという自然な欲求」 が立ち上がってきます。
意欲は“最初からある人だけのもの”ではなく、
安全な関係性の中で育まれるもの なのです。
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■ アドバンスで重要なのは「意欲の質」を見極めること
表面的には「変わりたいです」と言っていても、
実際には誰かに認められたいだけだったり、
逆に「変わりたくない」と感じていても、
心の奥では本当は前を向く準備ができていたりします。
アドバンスカウンセリングでは、
言葉ではなく“内的プロセス”を丁寧に聴き、
クライアントの本質的な意欲を見つけていくことが大切です。
意欲の有無ではなく、
どんな質の意欲なのか
どの段階にあるのか
そこに寄り添うことが、
セッションの深まりにつながります。
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■ まとめ:意欲はカウンセリングの“エンジン”である
アドバンスレベルのカウンセリングでは、
クライアント本人の「解決したい」という意欲が、変化のエンジンになります。
• カウンセラーが解決するのではない
• クライアントの主体性が中心
• 意欲があるほど気づきが深まり、行動が変わる
• 意欲は小さくてもよく、安全な場で育つ
この理解があると、
カウンセリングは単なる相談ではなく、
人生の質を変えるプロセス へと変化します。
アドバンスカウンセリングとは、
クライアントの中にある静かな意欲に寄り添いながら、
その人らしい変化を支える深いサポートなのです。

