会話が終わって、家に帰る道すがら。
あるいは、お布団に入って目を閉じたとき。
「あのとき、こう言えばよかったな」
「なんで、あの場でちゃんと返せなかったんだろう」
そんなふうに、過ぎたやりとりが頭の中でくり返し再生されて、ひとりで小さくため息をついてしまう。
もし、あなたにそんな夜があるのなら。このおはなしが、そっと寄り添えたらうれしいです。
その場で言えないのは、あなたがやさしいから
言いたいことが、あとから浮かんでくる。
これって、決して「口下手」とか「頭の回転が遅い」ということではないんです。
会話の最中、あなたの心はたくさんのことを同時に感じています。
相手の表情、声のトーン、その場の空気。
「こう言ったら、相手はどう思うかな」「傷つけないかな」と、無意識のうちに気づかっているんですね。
つまり、その場でパッと言葉が出てこないのは、あなたが相手のことを大切に思いながら、ていねいに言葉を選ぼうとしているから。
反射的に言い返すより、いったん受けとめてから考える。
それは、あなたのやさしさであり、慎重さでもあります。
あとから言葉が浮かんでくるのは、あなたがその出来事を「ちゃんと味わっている」証でもあるのかもしれません。
浮かんできた言葉は、「次の自分」へのプレゼント
「こう言えばよかった」と浮かんでくる言葉を、後悔の種として抱えてしまうと、心はどんどん重たくなってしまいます。
でも、ちょっと見方を変えてみませんか。
あとから浮かんできたその言葉は、実は「本当のあなたの気持ち」だったりします。
その場では飲みこんでしまったけれど、時間をかけてちゃんと形になった、大切な本音。
だから、こう考えてみてほしいのです。
「今日はうまく言えなかったけれど、私はこう感じていたんだな」と。
それは、自分の気持ちに気づく練習でもあります。
そして、浮かんできた言葉は、消えてしまうわけではありません。
次に似たような場面がきたとき、そっと口から出てくれるかもしれない。
今日のあなたが見つけた言葉は、明日のあなたへの、ちいさなプレゼントなんです。
「言えなかった自分」を、責めなくていい
夜、あの場面を思い返しては「なんであんなこと言っちゃったんだろう」「なんで言えなかったんだろう」と、自分を責めてしまう。
その気持ち、とてもよくわかります。
でもね、どうか思い出してください。
あなたはその場で、そのときの精いっぱいで向き合っていたということを。
会話は生きものです。
台本があるわけでも、正解が決まっているわけでもありません。
うまく返せる日もあれば、言葉に詰まる日もある。それが、自然なことなんです。
もし今夜も、あの場面がぐるぐると浮かんでくるなら。
胸に手を当てて、こんなふうに声をかけてあげてください。
「よくがんばったね。あの場にいただけで、じゅうぶんだよ」
責めるかわりに、ねぎらってあげる。
それだけで、こわばっていた心が、少しだけほどけていくはずです。
おわりに
言いたいことが、あとから浮かんでくる。
それは、あなたがやさしくて、ていねいに気持ちを扱う人だから。
浮かんできた言葉は、後悔ではなく、本当のあなたの声。
そして、次のあなたへと手渡される、小さなおくりものです。
うまく言えた日も、言えなかった日も、どちらのあなたも、ちゃんとがんばっています。
今日もひとつ、会話を交わせたあなたへ。
どうか、言えなかった自分を責めないで。
あなたは、あなたのままでいい。
おやすみなさい。今夜は、あたたかな気持ちで眠れますように。
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